プロカメラマンに伝わる指示の出し方|住宅広報向け撮影ディレクション術
同じ家を撮っても、仕上がる写真の“伝わり方”は大きく変わります。その差を生むのは、機材の性能だけではありません。撮影に関わる人たちの意思疎通、つまり「どんな写真が必要なのか」をどれだけ共有できたかです。プロカメラマンに任せるからこそ、曖昧にしない。これが、住宅広報の撮影ディレクションの核心です。
まず重要なのは、「最終用途の共有」。SNSかWebか、チラシか冊子か。どの媒体で、どのサイズで、どのページに使う予定なのかを事前に具体的に伝えます。縦横比やトリミング余白の有無も成果を左右します。「トップページのメインビジュアル用」「Instagramの4:5で使う」など、用途が明確になるほど、必要な画角や構図が定まります。
次に、「狙いたいイメージと言葉」を渡すこと。ふんわりした“おしゃれに”では伝わりません。「家族が集まる温度感」「清潔感と凛とした静けさ」「開放感より居心地を優先」など、写真で表現したい感情や価値観を短い言葉で共有します。この“言葉の方向性”が、当日の判断の羅針盤になります。
また、「必須カットと自由枠」を分けて伝えることも有効です。必ず必要なカットは具体的に列挙しつつ、同時にカメラマンの提案カットを歓迎する余白も残しておく。縛りすぎず、放任しすぎない。そのバランスが写真の幅を広げてくれます。
当日は“同行して口出しする”より、“目的を共有して任せる”姿勢が鍵になります。リアルタイムで「なぜそう切り取ったのか」を会話しながら進めると、次回以降の連携も格段にスムーズになります。撮影後は、採用写真だけでなく「なぜ使わなかったか」も共有すると、互いの基準が磨かれます。
撮影ディレクションとは、写真をコントロールする作業ではありません。会社の想いと暮らしのリアリティを、写真という言語に翻訳する共同作業です。明確な指示と信頼の両立。その積み重ねが、「伝わる広報写真」を静かに底上げしていきます。





